20231016 正統派を騙る乗っ取り屋

今頃になって、シオニズムユダヤ教ではない、という解説が溢れ出した。えっ?そうだったの?これまで聞いてきた話では、イスラエルの民は有史以来、各地で迫害されて流浪の民であった。彼らにも自分の土地、自分の国土を持つ権利があるはずだ、とのことで1947年だっけ、第二次大戦後に今の土地にイスラエル国家を建設し、世界各国から流浪のユダヤ人が故国目指して帰還してきた、めでたいことだ、この国は大事にしなければ、そういう話だったように思うんだけど。

 

シオニズムというのは、どうやら俺たちにも国を持つ権利があるんだ、土地を与えよ、主権国家として認めよ、という運動だと理解している。でもそんな主張は、正統派ユダヤ人の中から出てくるはずがない、という解説を、今、初めて聞いて驚いている。

 

パレスチナにもユダヤ人がいて、その人たちは別に主権国家など望んでいないのだと。ユダヤ人というのは民族ではなく宗教が紐帯だから、世界中に散らばっていても別に構わないのだと。イスラエルの中でも、そのように主張するユダヤ人が少なくなくて、その人たちはなんと最近、正統派ユダヤ人とか呼ばれるようになってきた。

 

混乱するなあ。どう理解したら良いのか。これは宗教と国家の関係を、わざと?わかりにくくして既成事実を積み重ねていく作戦なのかもしれない。

 

ユダヤ人はユダヤ民族ではなくてユダヤ教の信者のことである。これはそうなんだろう。キリスト教や仏教と同じことだ。だからユダヤ教の国家を設立する権利があるとかないとかいう話は、やはり変だなと。

 

私にとっての問題は、シオニズムユダヤ教ではないのだという主張だ。そうだったのか。声が大きくてもっともらしい主張をするものが、大多数の人々の考えを代表していないのに代表者みたいな顔をして振る舞うようになる。内情をよく知らない人たちは、ああそうかこいつらだ代表者なのだなと勘違いする。大多数の人々は、自分達が政治的ではないからまあいいやとか思って傍観したり放置したりしている。そうだとすれば、ああ、似たようなことが日本でもあるかもと連想する。

 

日本会議が自分達は保守だと主張し、日本の古来からの伝統を受け継ぎ、未来に向けて日本の伝統に沿った「正しい」主張をおこなっているのは自分達であると公言して憚らないのは、なんとなくシオニズムと通じるところがあるように感じる。日本生まれで日本育ちの自分からしても、どう考えても彼らはアナクロだろう、神道は日本らしいかもしれないがそれだけじゃないぞ、なんで今更軍事力増強だとか緊急事態条項だとか、戦前回帰みたいな話をしなくちゃいけないんだ、と理屈ではなく感覚的に違和感を覚える。国民に対して、国家に従えというような主張をする団体は一体なんなのか。

 

彼らは、日本のシオニズムかもと私はだんだん感じてきた。大多数の日本人は、戦前の国家はまあ、よくなかったと思っているし、ああいう統治構造には戻りたくないと考えているはずだ。しかし彼らは、自分達こそが伝統的日本を代表する団体だという。

 

シオニズムが、大多数のユダヤ人を代表する思想と行動の主体ではないにもかかわらず、自分達こそユダヤ人の代表だ、ユダヤ教の伝統を受け継いでいるのだという言説でイスラエルを建国したのだとすれば、それは正統派を騙っただけで、実は権力欲支配欲を満たし世界を縦に動かしたい連中の詐欺だったということにならないか。

 

そんなことは、おそらく世界中でバレていたのかもしれない。だから、今のような状況に陥っても、イスラエルを支持する国はほとんど出てこない。