トランプの敵は提督法支配だと藤原直哉氏が言っていた。アメリカファーストの意味は、提督法支配から自由になることだと。そして就任式後にトランプはアメリカが自由になったと発言しているのでおそらく提督法支配から脱したのか、あるいは脱する見込みがついたのであろう。
諸国はそれぞれに国内法を定め、国民は国内法に従う。国内法はその国の領土内で適用される。が、国内法の集まりが人間の活動空間全体をカバーできるわけではなく、例えば領海外、いわゆる公海では何のルールに従えば良いのか。ルールが存在しなければ海賊行為は野放しになる。南極はどうか。宇宙空間はどうか。宇宙船の中でアメリカ人がロシア人を殺したときにその罪を裁く法律はアメリカの国内法かロシアの国内法か。
電信は海底ケーブルを伝わって外国に情報を伝達する。公海の海底にはケーブルがあるけどそこで密かに枝線を繋いで情報を取るという犯罪が起きた時にそれを裁くのはどこの国の法律に基づいてか。発信側か、受信側の国か。これは例えばインターネット決済などにも関連する話である。
このように国内法を寄せ集めた時に生じる穴を埋めるために各種の国際条約や国連などによる取り決め、決議あるいは多数の国が参加する協定などが必要になる。主権不在の空間におけるルールという事である。海事法とか提督法とか呼ばれるが、海事法が民事の紛争解決を念頭においているのと異なり提督法は寧ろ刑法に近い。例えば公海で鯨を取るな、があるけどこれに違反すると翌年以降の捕鯨量が削減されたりする。
元々国内法の穴を埋めるために生み出されたこの提督法(群)が怪物的に成長し、今や国際ルールが国内法の上位概念になりつつある。これが21世紀の閉塞感の根源の一つだろうし、主権国家の活力減退をもたらす要因になっているのだ。
例えばLGBTQは一国の中では少数派であり、日本の場合は奇矯な人々と思われつつも酷く差別されていたとは言えない。堂々とおかまを売り物にテレビ出演で稼いでいた人などたくさんいる。が、提督法は少数派の権利を尊重せよと迫ってやまない。公海上のルールを国内法に反映せよと押し付けてきたのである。だから同性婚が国会等での審議イシューとして上がってくるようになった。一言で言って、余計なお世話なのだが、無視することはできない。
アメリカもそうらしい。だからトランプは、わざわざ人間の性は男と女の二つだけだ、とわざわざ言及している。
関税を下げろというのも提督法勢力の圧である。トランプはそれに抗って関税を国庫収入の柱にするんだと頑張っている。
振り返って日本ですが、もっと提督法を与えてくれという勢力が多くて残念。SDGsバッチを胸につけていると開明的な経営者とみられる、みたいな勘違いは来年には無くなっていてほしい。