20231223 トランプ第二次政権の産業政策を考える

アメリカの世論調査では、来年の大統領選挙は共和党トランプ候補の圧勝です。ひょっとしたら民主党バイデン候補が取れる州はほとんどないかもしれないという調査結果も見ました。選挙は水物とはいえ、またよく指摘される郵便投票などの撹乱要素を考慮しても、そろそろ企業経営者や政策担当者は、トランプ復帰後の米国の変化、世界の変化を可能性の一つとして真剣に検討し始める時期に差し掛かっていると言えるでしょう。

 

トランプ共和党は、前回(2017〜2020)に何をやったか、やろうとしたか。これが大いに参考になりますね。国内雇用創出を重視しました。そのためグローバリゼーションで世界各地に散らばった米国企業の製造拠点を国内回帰させようとして、実際にいくつか成功例も出た。エネルギーも自給自足、為替はどちらかといえばドル安政策でした。知財の中国への流出や、それを利用した中国製品の米国内流入に対しては極めて厳しい態度を取りました。日本に対しては、そのほかに、米国軍駐留のコストをもっと負担しろとも言ってきた。

 

ここ数十年の大企業経営の考え方というのは、グローバルな最適生産(賃料の安い国で生産し付加価値は本社(米国)で吸収)に大きく傾いていましたから、米国内では生産施設が国外流出して雇用も賃料も上がらず、付加価値収入を独占する資本家・経営者層との間で2極化が必然的に進んでしまった。それを、国内で消費するものは国内で作ろうではないか、そうすれば生産に関わる人も雇用や賃料で恩恵を受け、消費も拡大する。だから産業は国内回帰すべきなんだという、どちらかというと家族経営的な、中小企業的な経営思想で望んだのがトランプと言えるかもしれません。トランプはこの考え方を「アメリカファースト」と言っていましたが、アメリカさえよければいいのか、との反論もありました。技術的に言えば、グローバル最適生産というのはロジスティクス経営管理上も極めて大きな負担とリスクが生じるので、大きくみれば資本家・経営者も最終的にそんなに得するものでもない、という見方もあります。

 

さてトランプ共和党復権したら、おそらく同じことが起きるでしょう。アメリカファースト。国内産業の立て直し、反グローバリズム思想による米国民全体への恩恵の帰属。

 

自動車も鉄鋼もスマホも、可能な限り自国内生産を目指すのではないですか?余剰が生まれたらそれは輸出に回す。そんな考え方でしょうね。とすれば、むしろドル安を志向しておかしくない。となれば、ニクソン(日本からの繊維製品輸入を総量規制要望)、レーガン(日本車の輸入総量規制)などと同じく、伝統的な共和党の貿易政策の延長線上とも言える。そういえばグローバリゼーションは民主党政権で推進してきたね。

 

いつトランプが復帰するかについては諸説ありますが(藤原直哉氏は2月かもよと言っている)、その後の展開の中で、円高は起きる可能性が否定できないと思います。そこまで読んでる輸出企業は日本にどれだけいるかな。148円が145円になるというような話ではないと思うよ。石油は安く買えるようになりますね。インバウンドは減るかもしれない。

 

これからは、幅広いシナリオを頭の中に描いて準備しておかないといけないんでしょうね。