20231031 嘘と願望

昨日付の河北新報の記事。東電で汚染水を浄化するALPS(多核種除去設備の英文略称らしい)と呼ばれる設備の配管を洗浄していた時、誤って作業者が放射性物質を含む廃液を体に付着させたので入院することになった、という話があったが、これに関する東電の発表内容が実は訂正を要するものだったというもの。ポイントは二つで、一つは飛散した廃液の量。東電の発表は100mlとのことだったが強力企業への聞き取り調査でそれが数十倍の数リットルだったことが判明した。飛散した廃液の量は過小に発表していたわけだ。二つ目。作業に従事していたのは一次下請けの企業1社とのことだったが、実際には三次下請けの3社の社員だったことが判明した。東電は中抜きが少なく、直接のコントロールが効く範囲で作業を進めていたかのように受け取られる方向で発表していたことになる。

 

まあ、何と言うか、天下の東京電力がこれである。

 

例えば小学生か中学生が、放課後に禁じられていた買い食いしているところを見つかって教頭先生に怒られているとする。お前ら、これまで一体何回買い食いしたんだ!と詰め寄られて、本当は10回なのに3回だけです、と過少申告するのは子供らしくて微笑ましいかもしれない。

 

子供はなんでこう言うふうに過少申告するかといえば、どうせバレないし(確認のしようがないだろうとも思うし、まさか教頭先生がパン屋の親父に聞きにいくとも思えない、ていうかそこまで想像力が働かない)、回数が少ない方が罪が小さくなりそうな予感が働くからだな。

 

企業でも粉飾決算というのがある。正直に数字を並べると怒られるから、ここは工夫して隠してしまえと。バレなきゃそれでいい、と。

 

まあ、気持ちはわかる、といえばわかるわけだが、釈然としないなあ。

 

だって天下の東電ですよ、繰り返しますが。日本のエネルギー供給の屋台骨を支える大企業ですよ。その東電が、会社として発表した内容が、すぐに訂正されるくらい稚拙な過少申告だったという。

 

自分も会社勤めしてきたから、メカニズムはよくわかる。これは東電の経営が悪いというより、大企業特有の内部事情による部分が大きいと思う。つまり、過少申告は、まず現場がそれを行い(上司から怒られるのが怖い)、管理職がそれを行い(見抜く眼力がないか保身)、経営がそれを行う(現場感覚がないから「何次下請けなのか」と聞いて確認する、訂正させることも全うできない)というどうにも防ぎようのない構造から生まれるものだからだ。

 

中規模の会社であれば、現場上がりの強者の役員が一人や二人はいて、一次下請けにやらせていましたという報告が上がって来れば「嘘つけ、お前、もう一回確認してみろ」と突き返す。それができないくらいの大会社が東電だという理解を自分はしています。

 

この構造はかなり本質的なものだから、これからも東電は(結果として)嘘をつき続けるだろうし、それは現場担当者の小さな願望と、管理職以上の人たちのある種の無能さ(というか現場理解のなさ)が生み出す必然だと思う。別に東電だけじゃないよ。政府もメガバンクも一緒だよ。