20230703 資本主義とはこういうもの

いつも愛読愛聴している藤原直哉氏の動画で、彼は再建市場について、借金取り立ての権利を売買するなんて、いかがなものだろうかという意味の発言をしていた。

 

そうなんですよ。

 

再建とは、国債でも社債でもいいんだけど相手にお金を貸します。その証書を受け取ります。受け取った上で、その証書を売買するという話だからね。売買するから市場が成り立つ。100万円の貸したお金が帰ってきます。その証書を90万円で買いませんか。そんな話。

 

そしてもっとおかしいと私が感じているのが株式市場。

 

株式会社を設立するためには資金が要る。その資金の出し手には株券を渡す。100万円出資していただきました。額面5万円の株券を20枚差し上げます。そんな感じ。で、株式会社が設立できたのは資金を出していただいた株主様のおかげですから、株券をお持ちの方々には毎年配当を出します。株式会社の運営を行う取締役は、株主様に選んでいただきます。そういう約束をすることになっている。

 

で、株式会社の中で株式を公開つまり自由に市場で売買していいよというステージがあって、ここに到達することが社長その他の経営幹部にとっては名誉なこととされている。ついに公開まで漕ぎ着けましたというサクセスストーリーが喧伝される。

 

公開するとどうなるかというと、もう設立時に誰が資金を提供してくれたかは関係なくなって、株券は誰が買っても良いという世界に入る。つまり、経営者を選んだり配当を受け取ったりする権利だけが売買されるわけだ。会社を大きくしてきた経営者や生え抜きの社員にとっては、天塩にかけて、汗水垂らして成長させてきた自分達の居場所を、顔も見たこともない誰かが勝手にいいようにする権利を市場で売買しているという、そういう話になっていく。

 

なぜこんなおかしなことが平然と行われているかといえば、出資者がオールマイティなんだ、その権利は売買できるんだという原則が貫かれているからで、これこそが資本主義だ、社会主義共産主義よりも偉いんだ、いい制度なんだと教え込まれるからだ。

 

資本家は、いつも資本を増殖させる対象や機会を探している。スタートアップがもてはやされるのも、出した資本を増やして戻してくれる可能性がそこにあるからだ。

 

三菱UFJの理系の社長は、自分のことを良い人だとアピールする記事を何本もメディアに書かせているが、4日前のニュースで、イスラエルの企業と連携してスタートアップへの融資にAIを活用し支援するサービスを始めると出ていた。どんなに良い人でも(知らんが)、結局は資本主義の枠内でしか思考できないし行動できない。そしてそれが良いことだとおそらくは本心から信じている。世の中全体を見ることができないのは、まあ金融という業界に所属するものの宿命と言って良いだろう。