20230318 ふと思い出した本田宗一郎

自分の恩師は、不思議な経験をしたという。学生時代に奨学金を得ていたのだが、その出どころを知らされなかった。一体、どのようにして集められた奨学金なのか知らずに過ごした。加えて、返済義務も報告義務も負わなかった。要するに貰いっぱなし。太っ腹だなあと思いつつ、金銭的に余裕のなかった当時の彼は、ありがたく勉強させてもらったと言っていた。

 

その後、我が恩師は国立大学の教授になった。学会での地位も確たるものとなった50代前半、突然、30年前の奨学金の正体がわかった。本田宗一郎氏が個人の資産の一部を財団に託し、有為な学生を支援していたものだというのだ。ただしそのこと(本田氏がスポンサーであること)は絶対に伏せておくようにとのことだったようである。その奨学金で学業を納めた学生は2千人近く。なぜ30年後になって事情が明かされたかといえば、その財団が使命を終えて解散する際に、散々議論の上で、奨学生だった皆さんにお伝えしようということになったのだそうだ。

 

我が師のマイカーは、それ以来、ずっとホンダだそうだ(笑)。

 

本田宗一郎が匿名にこだわったのは何故だろう。

 

この人は通常の企業経営者とは違っていて、四輪への展開を通産省から止められたら喧嘩したし、マスキー法には正面から技術で立ち向かってクリアしてしまった。

 

世間軸ではなくて自分軸で判断、行動する人だったのだろうと思う。長いものには巻かれない。逃げない。技術屋さんに、こういう人はいる。で、こういう人は、決まってシャイである。

 

何故だろう。

 

長いものに思い切り巻かれてステップアップしてきた人たちが、今窮地に立っている。長いものの代表が安倍晋三で、思い切り巻かれてきたのは高市であり三浦であり日銀だ。

 

今の経済界に本田宗一郎はいない。いや、いないは言い過ぎかもしれない。タマホームの社長は社員にワクチンを打つなと言った、長いものに巻かれない人のようだったし、グローバルダイニングも理不尽な規制と戦っている。

 

話を戻すと、自分軸を持っていて、長いものに巻かれず、逃げない人たちは、本来は寄付なんてしたくないのである。そうせざるを得ない環境がそうさせるのだ。しかしそれは売名行為と見做される危険もあるし、そもそもそんなことで誉められたくもないというか誉められること自体が恥ずかしいことだという感覚がある。まともである。

 

それくらいの企業経営者が複数出てきて、初めて日本もまともになるような気もする。