うろ覚えではあるが、こんな話があった。内戦中のユーゴスラビアでもテレビが見られて、そこで日本から輸入された「風雲たけし城」を放映していた。それを見た内戦に従軍する兵隊は、俺たちはなぜ戦争なんてしてるんだろうと思ったというのだ。
風雲たけし城は、世界100ヵ国くらいに輸出されていたらしい。ネットで検索すると、世界中でこの番組を見た外国人たちの書き込みがあることがわかる。日本語のまとめサイトがある。
あるシリア人は「あの時代は良かった」と言い、あるアラブ人は「礼拝の後にあの番組を見るのがルーチンだった」と書く。エジプト人もアメリカ人も、あの番組は家族みんなで見て大笑いしていた、とてもいい思い出だ、今ならコンプラで製作放映できないんじゃないか、等々。ネガティブなコメントがほとんどない。というか、見たことない。
あれは確か80年代後半に金曜日の夜8時からTBSで放映してたんだよね。視聴率激戦区。日本テレビは太陽にほえろ、NET(と当時名乗ってたと思う。テレビ朝日)は新日本プロレス。その成果自分はリアルタイムであれを見ていないけれども内容は承知している。
まあ本当に馬鹿馬鹿しい番組だけれども、明るくてスカッとした後味が残る、独特のテイストだった。出演者みんな楽しそうで、その原点はたけしが目指した「子供の頃に泥んこになって遊んだあの感覚」というのだから平和そのものである。
子どもは、楽しいから遊ぶ。ほかに理由はない。泥んこになって遊ぶのは楽しい。それを大人がやれないのは何故なんだ。
世界から寄せられたコメントの中には、あれを作れるのは日本だけだ、あれを考えた人たちは天才だ、自分の中であれを超える番組はない、等々。
クールジャパンとか、頭で考えた日本売り出し策はどうもだいたい失敗するようだ。風雲たけし城が日本のメッセージとして最高なんじゃないか。戦争やめろなんて野暮なことは言わない。理屈で説得しようとなんてしていない。楽しく同心で遊ぶことがどんなに楽しいか、ダイレクトに伝える。
逆にいうと、世界を支配しようとする連中からすればこういうのが一番嫌なんだろうな。戦争中の兵隊に戦争を馬鹿馬鹿しく思わせるような番組を支配しゃが好むはずがない。だからハリウッドはいつも世界の終わりを繰り返し繰り返し映画化する。英雄的な行動を賞賛する。
西洋人は馬鹿だと思う。