20230924 432Hz

造物主がこの世を造ったとして、手持ちの手段は何なのか。その一つとして挙げられるのが波動だ。万物は微粒子から成り、原子は電子核の周囲を電子が周回する構造だと学んだ。電子核と電子の間には空間、隙間がある。それも相当広い。だから私のこの肉体も、原子レベルで見ればスカスカなはずだ。そして電子は目で見られる世界における物質(粒子)ではないぞ、それは物質と波動と、両方の性質を持ったものなのだぞという理解不能の考え方が量子力学から出てきた。そうしないとミクロな世界の説明ができないのだという。ここでも波動だ。

 

人間が音として知覚できる波動はおおむねピアノの88鍵の範囲に収まるらしい。だがその内訳について論争があることは知らなかった。

 

音階はABCDで表され、Aは通常のハ長調で言えば「ラ」の音にあたる。アルファベットのAで表されることから想像できるように、この音のヘルツを最初に決めて、あとはオクターブがあるから12で割るなどしてBCその他の音のヘルツ数が自動的に決まる。だからAのヘルツ数は基準音と呼ばれている。楽器などチューニングするときにはまずAを合わせて、そこからギターなら隣の弦と共振させたりしながら全体を調整していくことになる。

 

基準音のヘルツ数は、どうも楽曲によって様々に設定されてきたらしい。いろんな情報が飛び交っているが、モーツアルトやベルディは432、ヘンデルは422、カラヤンは444を好んだとか、日本では442が実質的に標準となっているなどなど。ではなぜ440が標準と言われているかといえば、これがなんとISO規格なのだというのだ。

 

ISOは1953年に基準音は440と定めている。1975年に再整理してISO -16として記述された。そしてこれには経緯があって、1939年に英国規格協会が既に基準音を440と定めていたので、これを踏襲したということのようなのだ。

 

さて、ここまでお読みいただいた当ブログの読者の方々には、なぜヘルツ数を規格化?なぜそれをイギリスが先にやった?なぜそれを国際規格ISOに格上げした?など様々な疑問が回答とともに脳裏に浮かんだのではないでしょうか。

 

実際には、基準音をどう決めようが、基準音ばっかり聞くわけではないので、我々の精神生活にそれほど大きな影響があるとは自分には思われない。ただし、432で演奏してみると、確かに緩いというか、緊張感がなくなる感じはあるので、実際に演奏可能な(ベルディはオペラ歌手の一般的な音域を考えて432を好んだとも言われる)範囲内で、できるだけ高いところに基準音を設定し、それを国際基準(ワンワールド)にしてしまいたいということを誰かが考え、推進したということは十分にありそうな気はする。

 

実際、楽譜には拍子もテンポも添書きで示すことは可能なのだから、ピッチも自由に設定して良いではないかと思わないでもない。なんでピッチ(音程)だけが国際標準化されたのかは、どうせ実務的な説明がたくさん出てくるだろうけれども、思想的には注目すべき問題のように思われる。

 

逆に言えば、もしそうなら、世界支配者というのはありとあらゆるところまで管理の手を伸ばしてくるものだなあという感慨を禁じ得ない。