20230816 広陵・真鍋・バント

あまりにも象徴的なシーンだったので記録しておく。

 

慶応対広陵、9回裏、3対3の同点、無死ランナー一塁、バッターは高校通算58本の本塁打という触れ込みで、今大会の四天王の一人とされる強打者真鍋選手。この試合を観戦していたおそらく全員が、一打サヨナラの展開を期待しただろう。

 

しかし。

 

監督のサインはバント!!

 

しかも、いかにも慣れない格好で無理にバントした結果、小飛球となって三塁手が捕球しランナーはそのまま、ただアウトカウントが増えただけの結果となった。その後の攻撃もつながらず、結局試合は延長にもつれ込み10回の攻防の結果、慶応が6対3で勝利を収めた。あのバントは、広陵のベスト8進出を妨げた采配だったかもしれない。

 

あーこれこれ。日本中で、これをやっている。学校で、企業で、役所で。確率で考えたら、ヒットは2割か3割しか出ないだろう、そうしたらランナーを進めることができずにアウトだけが増えるということから、昔から高校野球ではノーアウト一塁で犠牲バントが多用されてきた。高校野球の打者は打てないから、バントの方が確率が高いという考えもあったんだろう。

 

その確立の考え方も本当かどうか怪しいものだけれど、ここ1番の勝負になると安全策をとりたがる心理というものが実は大企業とか名門の学校とか役所とかの主流なのだと思いませんか。広陵高校は全員坊主頭だし、エース投手に150球投げさせるし、あらゆる意味で昭和を引きずった、ある意味で見事に象徴的な敗戦だった。勝ったのが、長髪でニコニコエンジョイしながらプレイしている慶応というところもコントラストが鮮やかだったなあ。

 

広陵の監督の心理は痛いほどわかる。選手を信じて打たせました、というコメントを言える展開にはならないと思ったのだろう。手堅くやって、1番の強打者にも安全策を取らせる厳しい監督として評価される方が脳内イメージとしてはよかったのだろう。わかるわかる。でもそれは全体が成長していた昭和の時代の判断基準であって、また他球団に比して段違いの戦力を保有していた昭和の読売巨人軍の采配であって、勢力均衡の対決でイチかバチかリスクをとりながら勝ちに行く時の判断としては、やっぱり甘かったと思う。

 

崖っぷちでリスクを取るときに、どうしても必要なのが選手への信頼感だな。どんなにホームランを量産した選手でも最終的には個人など信用しない、というのが今回の伝統高の采配であって、そういう意味では、そういう個人軽視の時代が終わりつつあることを悟らせるメッセージとしてこの試合はとても重要なものだと思った。慶應の監督は、打ってる選手にバントのサインを出してなかったもんな。