20221201 幼年期の終わり?

ネット上で、数は少ないが「いろんな生物が憑かれたように集団で円回転する姿が世界中で目撃され始めた」との投稿が見られるようになってきた。

 

いくつかは動画になっている。オンになったスマホの周りを無数のアリが規則正しく反時計回りに動くものや、羊や牛が集団で円を描いて歩き続ける動画がある。文章情報だが、中国では人間までもが四つん這いになったりして集団で規則正しい円運動?をしているとの話もある。

 

頭から信じるわけでもないが、この話はアーサー・C・クラーク幼年期の終わり」第三部「最後の世代」のある描写を想起させるものがある。引用しよう。

 

「これはきみにとっては悲しいことかもしれないが」とカレルレンがいった。「しかし、きみの人間としての標準は、もう通用しないことを忘れてはいけない。きみは人間の子供を見ているのではないのだ」

 そういわれても、やはりそれがジャンの受けた第一印象だった。どれほど理屈を並べられても、それを払拭できなかった。彼らは何か、複雑な儀式舞踏をやっている未開人のように見えた。真っ裸で、不潔で、もつれた髪は眼にまで垂れ下がっていた。ジャンの見たところでは、彼らはみな五歳から十五歳までの年齢に見えたが、それがみないっせいにおなじ速度と正確さをもって動きまわっているのだった。そして、誰もが、周囲には完全に無関心だった。

福島正実訳、ハヤカワ文庫版、347-348ページ)

 

この話の大きな流れは、悪魔に似た姿を持つ高知性宇宙人が飛来して人類の軍拡競争を改めさせ世界政府の設立を誘導し平和な地上世界を実現する。しかしこの宇宙人は上位の生命体(肉体を持たない統一的精神体らしい)に派遣されたに過ぎず、自らは精神体への上昇を封じられている。人類には高次精神世界への進化可能性があり、その過程を誘導するのが彼らのミッションだった。その過程を終え、人類は次の世界へと向かうがそれは肉体を持たず精神的に一つになる世界であり、その進化を始めた若い世代は自らの個別意志を持たず全体として統一的な動きを始めるというものだ。それを、旧世界の最後の生き残りであるジャンが驚きを持って見つめるというのが上の文章のくだりである。

 

どうだろう。悪魔崇拝も話題になっているが、クラークの描く悪魔の姿に似た宇宙人という登場人物にはそれに近い印象がないだろうか。世界統一政府という言葉も最近、聞き慣れている。核や原子力を抑制し、地球平和のためにみんなで頑張ろうというスローガンにも既視感がある。

 

で、それは過程だというのだ。これから生まれてくる人類は、それまでの人類と違うのかもしれない。自らの個別意志を持たず、宇宙意志と一体となった精神的集合体として次の次元に移っていく。これが、クラークの描いた人類と地球の未来像だ。今起きていることと、少し似ている。